月別: 2021年5月

教育のデジタル化 5/10中国新聞「エール」より

エヴァンゲリオンの世界の話だと思っていた「緊急事態宣言」、「ロックダウン」が現実になって1年がたつ。新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)は社会を大きく変えた。教育界も例外ではなく、想定外の学校休業を受け、学校も塾も緊急対応を余儀なくされた。

新時代教育の象徴として出番を待っていたICT(情報通信技術)は、子どもたちの学びを守る救世主として一気に時代の主役となった。対面指導、一斉授業ができない状況でも、指導を継続しなければならない。多くの学校や塾が、いや応なくタブレット学習、動画配信、リモート授業で対応した。当初は試行錯誤ではあったが、教師も懸命に取り組んだ。

その結果、旧態から抜け出し、新たな学習の形が成立したと言っていいだろう。タブレットを用いた学習コンテンツが駆使され、欠席してもリモート授業を受けることが日常になりつつある。まだ運用面において未成熟な部分はあるにせよ、教育のデジタル化が子どもたちの今後の学びの形を変えていくことは間違いない。

ではICTは学校や塾に取って代わるものなのか。否である。特に小学生の学習は、ある単元の考え方や解き方を学び、演習して身につければ、はい終わりとはいかないからだ。

人の振り見て我が振り直せの格言通り、集団の中で人から学ぶことは多い。隣の子の真剣な様子を見て、勉強する姿勢を学び、授業で周りの子の反応に刺激を受け、思いもしなかった発想に気付きをもらう。笑いや緊張もあれば、教師のしった激励もある。

子どもに最新のツールを与えさえすれば、よい教育環境を整えたことにならないと、親も理解してほしい。友人やライバル、教師と作るライブな空間が醸す空気の中で子どもは学び、成長する。GIGAスクール構想、ITC教育、大いに結構。学びの方法が高度化し、変化する教育改革を歓迎したい。ただそれはあくまでも教育ツール、メソッドだ。空間と空気の中にこそ学びがあるのは今も昔も変わらない。