母の言葉 9/27中国新聞「エール」より

塾に来たMくんが浮かない顔をしている。いつもは元気すぎてお小言をもらうほどなのにどうしたのだろう。授業中も暗い顔で下を向いている。気になったので呼び出して話を聞いた。

「どうした。ずいぶん元気がないじゃないか」と聞いてみたが、反応はない。「何かあったか」と重ねて聞くと、ようやく重い口を開いた。「模擬試験が…」

先日、模擬試験の結果を返却した。Mくんは得意の算数で失敗していたのを思い出した。結果が良くなくて落ち込んでいたのか。えらい。真剣に結果を受け止めている。感心感心、と思いきや、そうじゃなかった。模擬試験の結果をお母さんにこっぴどく怒られたと言う。「こんなんじゃ合格は無理」「もう受験やめなさい」「塾も行かなくていい」とまで言われ、ショックを受けたようだ。

模擬試験では、得点や順位、偏差値、志望校判定など非情な数字がいくつも出てくる。この数字に親の心は大きく揺れる。良ければ安心するし、悪ければ不安になる。一喜一憂するなとは言われるが、なかなか感情を抑えきれない。

だが、その感情を生のままに子どもにぶつけるのはやめたほうがいい。大好きな母親から投げつけられた感情的な言葉は子どもの心をいとも簡単に傷つける。

やる気を起こさせるための𠮟咤のつもりかもしれないが、「合格できない」「受験も塾もやめさせる」という言葉を、子どもは額面通りに受け取ってしまう。

負の感情を言語化しないこと。どんなにはらわたが煮えくり返っていても、そこは我慢。そして言葉がけを変える。数字は冷静に確認するだけでいい。「どこがいけなかったのかな」と具体的な問題点、課題を明らかにする。その上で、「次のために何をどうしようか」と、改善に向けて具体的な行動を親子で話し合おう。

叱るのがいけないというのではない。12歳は大人にあれこれ注意されながら学んでいく。だが、論理的、理性的に叱るのと感情的に怒るのは全く違うということを理解してほしい。