出会いの季節 8/23中国新聞「エール」より

秋は出会いの季節だ。中学受験を考える親子を対象に、多くの学校で学校説明会やオープンスクールが開催され、文化祭や体育祭が公開される。学校も子どもや保護者が良い印象や思い出を持って帰れるよう、周到に準備して臨む。

説明会でアピールされる独自の教育活動や校風に興味をひかれ、文化祭で吹奏楽の演奏などのステージに魅了され、体育祭で応援団やマスゲームなどの伝統の演目や競技に目を奪われる。こうした体験が、受験生の意欲を刺激し、モチベーションを上げることになれば、保護者にとってはありがたい。学校にとっても、人気が高まり、志願者の増加につながれば万々歳。受験生と学校の双方にウィンウィンの関係を築く出会いの場と言えよう。

ただ、こうしたイベントはとかく学校の良いところばかりが強調されがちだ。だから、学校選びにはそれ以外のところにも目を向けたい。

言うまでもなく、学校とは建物ではなく、人と人が作り出す空間だ。同級生が、先輩と後輩が、生徒と先生がつくる関係性は、その学校独自の雰囲気や校風を生み出す。イベントでも校内の生徒たちの様子、生徒と先生の何げないやりとりなど、見ようとすれば見えてくるはずだ。そこにわが子を重ねることで入学後の姿もイメージできるだろう。

学校説明会で先生と話せる機会があれば、勉強や学校生活がうまくいかない場合の対応を聞いてみてもいい。成績不振や人間関係で悩む生徒は必ずいる。ケース・バイ・ケースだとしても、それなりの答えを持っているかどうかで学校の考え方や覚悟が分かる。

とはいえ、初めからわが子にぴったり合うオーダーメードの学校は残念ながら存在しない。子どもが自ら関わって居心地のよい場所にしていくのだ。勉強や課外活動、部活動に積極的に取り組み、それを楽しむことができれば学校が好きになり、学校は真の居場所となる。良い出会いを得ても、その後の付き合い方次第ということは肝に銘じておこう。